2018年は、たくさんの子ども達に出会うことができました。現在、小学生・中学生をあわせて23人の子どもが、DO-YAで宿題・教科の勉強をしています(2018年12月末現在)。
来ている子どもは本当に多様です。すでに5カ国のルーツを持つ子どもがDO-YAで数学や日本語を学んでいます。不登校の子ども達も来るようになっています。自分のペースで進められるのがよいからか、全員が、完全に辞めてしまうことなく継続してDO-YAに来てくれています。
私たちも試行錯誤しながらのサポートが続きますが、DO-YA・クロスベイスがいま大切にすべきことは、いくつか明確になってきたように感じています。
11月からDO-YAに来てくれた中学2年生がいます。不登校だという彼は、はじめての面談のときは少し不安そうな様子でしたが、自分から数学をやり直したいと言ってくれ、学校進度ではなく彼にあったペースと方法で進めることを確認しました。
ブランクが大きいと、小学校のころの学習もあいまいになります。はじめての授業では、現在のレベルを確認する問題を解いてもらいました。九九の覚え直しからはじめて、割り算・小数など、ステップを踏んで進めています。
彼は12月末までほとんど休まずにDO-YAに来てくれました。2ヶ月が経ち、いまでは勉強について「これならできそう」と少し自信を持ってくれているようです。できる問題は自分でどんどん進めたり、プリントの半分を宿題で出したところ、全部やってきたこともあります。彼にとって来やすい場所、頑張れる場所になっているのかな、と感じ、嬉しく思っています。
彼は最近、授業が終わったあと何も聞いていないのに、「数学が終わったら次は漢字がやりたいねん。結構忘れてるところがあるから。」と言っています。
このようにひとりひとりに合わせた学習を行いながら、もうひとつDO-YAが大切にしている時間が、対話を通じた振りかえりです。私たちは「雑談」と呼びますが、その時間で私が大事にしていることの一つは、その人自身が自分についての気づきを得ることです。言い換えれば、細かな習慣から大きな目標まで、自分自身をとりまく状況や、自分の感情や考えをつかまえる、ということです。
例えば、ある中学生は、様々な興味を持って自分から調べたり取り組んだりするとても頭の良い人なのですが、DO-YAの数学の時間や、学校の授業はとてもしんどそうです。学校の授業でもノートを取ることが難しい様子でした。
DO-YAで彼と対話をするうちに彼が自分自身で発見したのが、細かい字を書くことや読むことが大変、ということでした。数学の解説動画などは、持ち前の理解力で集中して見続けることができます。
そこで相談をして、ノートに新しく5行ごとに線を引き直して大きな字で書けるようにし、また筆ペンを使って数学の方程式を解くという方法を一緒に作ってみました。すると、普段の勉強よりも疲れないことがわかったのです。
私は、このプロセスが大切な理由は「自分で選ぶ」、というところにあると考えています。どんなことも、本人が納得して選び取らなければ、自分の行為が自分のものではなくなってしまう気がします。大人が見ていて「こうしたほうがいいのにな」と思うこともたくさんありますが、アドバイスや提案という形で、それが良いと考える理由も一緒に話します。
逆に大人の権力に基づいて指図をすることは、子どもの自己決定権という、もっとも大切にすべき子どもの人権を奪ってしまいます。DO-YAで過ごす時間は、本人の人生のなかでは僅かですが、その間にできるだけ自分自身で選び進んでいく経験をしてほしいと考えています。
DO-YA・クロスベイスはそんなふうに、自分がどうしたいかをゆっくり考えられる時間、そして軽やかに実行できる場所でありたいと思います。